Research
Axon Physiology in the CNS
Axon is a part of neuron which generates and propagates action potentials towards the presynaptic terminals. Due to robust regenerative nature, the axonal action potentials are thought of as stable binary code for rich and ultrafast neuronal computation in the brain. We focus on to study the dynamic control of the excitability of the axons, to reveal the general rules governing the neuronal signaling supporting the complex brain functions.
Our approach
To study the axonal spike signaling with a high temporal resolution, we adopted direct electrophysiological recordings from the single axon terminals of mouse hippocampal mossy fibers, the best-studied axons in the CNS. We also often use numerical computation using the realistic model of the mossy fiber axons, the best-model of CNS axons thus far, to test for quantitative validation of the experimental findings.
Achievement
The mechanisms of axonal afterdepolarization (ADP)
Axonal spikes are often followed by slow depolarization lasting for tens of ms. Using direct recording and simulation, we revealed that passive propagation by the capacitive discharge of the axonal membrane as well as voltage-dependent K and slow Na conductances underlie the generation of ADP.
eNeuro 2018a DOI: https://doi.org/10.1523/ENEURO.0254-18.2018
Front Cell Neurosci 2019a DOI: https://doi.org/10.3389/fncel.2019.00210
Front Cell Neurosci 2019b DOI: https://doi.org/10.3389/fncel.2019.00407
Analog modulation of axonal spike signaling
Using direct recording from the single axon terminals of hippocampal mossy fibers, both duration and amplitude of axonal spike are subject to modulation by preceding action potential-ADP sequence, deviating from the conventional notion of digital nature of axonal spike signaling. Short-term plasticity of axonal spike also impacts on transmitter release from the axon terminals.
eNeuro 2018b DOI: https://doi.org/10.1523/ENEURO.0415-17.2018
Front Cell Neurosci 2019b DOI: https://doi.org/10.3389/fncel.2019.00407
研究テーマ
私たちは、中枢神経系における情報伝達のメカニズムに関する研究を行っています。In vitroの脳研究ツールであるマウス海馬のスライス標本を用い、パッチクランプや蛍光イメージング、光操作などの機能解析法を駆使して未知のメカニズムを追及することで、脳の動作原理についてボトムアップ的に理解していきたいと考えています。現在は、軸索終末からの直接記録による中枢軸索の機能解析に焦点をあてた研究を進めています。
研究手法
・ 単一軸索終末サブセルラー記録法
・ NEURONを用いた軸索興奮伝播のシミュレーション
・ caged化合物の光分解による神経回路の局所的刺激
主な研究成果
海馬苔状線維における後脱分極のメカニズム
神経軸索で生じる活動電位に引き続き、しばしば数十ミリにおよぶ緩徐な後脱分極応答が記録されます。本研究では、マウス海馬苔状線維終末からホールセル記録を行い、後脱分極の機序と意義を調べました。これまで想定されていた容量性成分に加えて、ナトリウムチャンネルの遅い再活性化が関与する可能性を示しました。後脱分極が、引き続く活動電位による軸索終末へのカルシウム流入を促進し、短期可塑性を調節することも明らかにしました。
eNeuro 2018a DOI: https://doi.org/10.1523/ENEURO.0254-18.2018
海馬苔状線維における軸索スパイクのアナログ制御
神経細胞の出力である神経軸索では活動電位を生じ、これを標的細胞にむけて伝播することで、高速で安定な情報処理を行っています。本研究では、マウス海馬スライスにおいての単一神経軸索からのサブセルラー記録を可能とし、全か無かの法則に従う「脳のデジタル信号」と考えられてきた神経軸索での活動電位が、神経活動に応じてアナログに変化することを見出しました。また、この現象には、遅いナトリウムチャンネルの活性化を介した緩徐な後脱分極応答が関わることを明らかにしました。
eNeuro 2018b DOI: https://doi.org/10.1523/ENEURO.0415-17.2018
本成果は、北海道大学ホームページにてプレスリリースされました(2018年2月27日)。
https://www.hokudai.ac.jp/news/180227_pr.pdf
AMPA型グルタミン酸受容体のシナプス移行のタイミング
海馬CA1野シナプスでは、AMPA型グルタミン受容体数が増減することで顕著な可塑性を生じます。本研究では、光反応性AMPA受容体ブロッカーANQXの光照射により細胞膜上のAMPA受容体を不活化し、その後の応答の回復経過をモニターすることで、細胞内予備プールの受容体がシナプスに組み込まれるタイミングを調べました。AMPA受容体は高頻度刺激の直後にシナプスに輸送され、神経伝達を持続的に強化することがわかりました。
J Neurosci 2012 DOI: https://doi.org/10.1523/jneurosci.0720-12.2012
本成果は、北海道大学ホームページにてプレスリリースされました(2012年5月9日)。
https://www.hokudai.ac.jp/news/120509_pr_med.pdf
カルシウムストアによるプレシナプス可塑性の増幅
海馬苔状線維シナプスでは、NMDA受容体活性化を必要としないシナプス前性の長期増強が誘発されます。本研究では苔状線維終末内カルシウム動態を光学的に測定し、このプレシナプス可塑性には細胞内カルシウム放出による神経終末内カルシウムシグナルの増幅が関わることを見出しました。この際に、心筋の収縮に必要な2型リアノジン受容体と呼ばれる細胞内カルシウム放出チャンネルが関与することも明らかになりました。
PNAS 2008 DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.0802175105
本成果は、朝日新聞 (2008年8月15日朝刊) 、毎日新聞 (8月5日夕刊)などで報道されました。
プレシナプス可塑性の発現機構
海馬苔状線維シナプスでのシナプス前性の長期増強のメカニズムに関して検討し、シナプス前終末へのカルシウム流入量は変化せず、カルシウム流入以降の開口放出過程が亢進し長期増強を引き起こすことを示しました。また苔状線維シナプスは繰り返し刺激により著明に応答を増強する高ダイナミックレンジ型の短期可塑性を示しますが、この際にカイニン酸型グルタミン酸受容体によりシナプス前終末へのカルシウム流入が増大することを見出しました。
J Neurosci 2002a DOI: https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.22-24-10524.2002
J Neurosci 2002b DOI: https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.22-21-09237.2002
プレシナプスグルタミン酸受容体の機能
海馬苔状線維シナプス前部にはII群代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)とカイニン酸型グルタミン酸受容体が存在し、伝達物質放出や軸索興奮性を調節する機能を持つことを示しました。このうち、特異的II群mGluR賦活薬DCG-IVが海馬のグルタミン酸作動性シナプスのうち苔状線維入力を選択的に抑制することを明らかにした1996年のJournal of Physiology論文は、海馬CA3野シナプスを対象とした多くの研究論文で引用されています。
J Physiol 2000 DOI: https://doi.org/10.1111/j.1469-7793.2000.t01-1-00653.x
J Physiol 1998 DOI: https://doi.org/10.1111/j.1469-7793.1998.833bm.x
Prog Neurobio 1998 DOI: https://doi.org/10.1016/S0301-0082(97)00085-3
J Physiol 1996 DOI: https://doi.org/10.1113/jphysiol.1996.sp021395
プレシナプス短期可塑性の残存カルシウム仮説の証明
すべてのシナプスは活動状態に応じてダイナミックに伝達効率を変化させます。この短期可塑性と呼ばれる現象のメカニズムとして、神経活動に応じてシナプス前終末に流入したカルシウムイオンの蓄積が関与するとの仮説(残存カルシウム仮説)が従来から提唱されてきました。caged化合物の光分解によりシナプス前終末内のカルシウム濃度を瞬間的に操作する実験を行い、この仮説を証明することに成功しました。
Nature 1994 DOI: https://doi.org/10.1038/371603a0
プレシナプスカルシウムチャンネルの同定
神経伝達物質の放出にはシナプス前終末のカルシウムチャンネルを介したカルシウム流入が不可欠ですが、中枢シナプスでの伝達物質放出に関与するカルシウムチャンネルのサブタイプは不明でした。N型カルシウムチャンネルブロッカーωコノトキシンを海馬スライスに投与したところシナプス伝達が抑制されたことから、海馬における伝達物質放出にはN型カルシウムチャンネルが関与することを示しました。
Neurosci Lett 1988 DOI: https://doi.org/10.1016/0304-3940(88)90253-4